番外地

dungeon_番外地
dungeon_番外地 posted by (C)トロイ


 番外地

 オレがここに住み始めてすでに半年。ただひとつの楽しみと言えば、それは郵便物が来ることだ。来るというのは正確ではないかもしれない。ここでは郵便は配達されるものではなく、取りに行くものだからだ。それも、けっこう怖い思いをしながらなのである。
 初めのころは、建物の外見の雰囲気からして怖ろしかった。中に入ったら、私の身になにか只ならぬことが起りそうな気配に捉われたからだ。
 いまでは、郵便物を取りに行くのを、ここに住んでいくための儀式として考えられるようにまでオレの精神は進化(?)をとげている。

 俗に言う郵便局("幽罠局"とも言われている)はここからバイクで30分ほどの所にある。
 その石造りの建物は荒地の中にぽつ~んと廃墟のように建っている。かつては重罪人たちの終の棲家、死を待つだけの監獄だったと言われている。
 建物の裏手に鉄の扉の入り口がある。鉄の扉の右端に鍵穴があり、番外地の住人だけに与えられている鍵をそこに差込み、建物の中へ入っていくことになる。
 中に入ると、幅2mほどの回廊が奥へと続いている。ここの空気はいつも湿気を帯びていて、重くて鈍い感じなのだ。
 ところどころに天井から裸電球がぶら下がっている。20Wくらいだろうか。
 やがてもうひとつの鉄の扉が見えてくる。その扉の右の壁に私書箱があるのだ。与えられているもうひとつの小さな鍵で私書箱を開ける。私書箱の中に手紙だけが入っているときはそれを取り出して、自分の住居に戻ればよい。

 私書箱に、手紙の代わりに数ヶ国語で書かれたメモが入っているときがある。
「あなたさま宛ての書留が届いています。入口用の鍵を使って、扉の奥にお進みください。書留は必ずお受け取りになられますようお願い申し上げます。なお、郵便物が留置き期間を過ぎますと、あなたさまの滞在ビザは誠に遺憾ながら失効の運びとなりますので…」
 その場合は、鍵で鉄の扉を開け、オレはさらに奥へと入っていくことになる。この扉はかなり重く、内側には把っ手などが付いていないため、いったん閉まってしまうと内側からは開けることができない。

 回廊の奥に進むにつれて暗さが増してくる。それは、深い闇に向かって歩いていくような感じなのだ。
 天井からぶら下がっているのは人骨を組み合わせて作ったシャンデリアで、中央にロウソクが一本灯されている。
 前方がぼーっと明るい。そのまま進むとすこし広いところに出る。左右の壁にひとつづつ扉があり、その横に机が置かれている。アタマからすっぽりと黒いフードをかぶった黒マントの老人がそれぞれこちらを見る。
 オレはいつも最初に目が合った老人の机のほうに行くことにしている。机の上のロウソクの燭台の下に、オレは私書箱に入っていたメモを置く。老人はそのメモを見やると、何も言わずに「入れ」と鉄の扉の一つを指さす。

 指示された扉を開けてオレは中に入っていく。
 そこには薄暗い部屋がいくつもあり、各部屋の中には郵便物が山をなしていて、蛍火のように発光している。そんな中で自分宛の郵便(書留)を探すのは並大抵のことではない。運よくすぐに見つかることもあるが、たいていの場合は2、3時間はかかってしまう。
 探し出した書留を持って、オレはマントの老人のところへ戻り、その書留を老人に差し出す。老人はその書留をロウソクの灯にかざし、なにやら中を読もうとしている。それからおもむろにうなづくと、机上にある鈴を振る。
 私の背後から音もなく黒ずくめの老人が現れると、机の老人から書留を受け取り、目と顔の動きで「ついて来い」とオレをうながす。
 覗き窓ほどの明かり取りが付いているドアのところまで来ると、老人は手にした書留をその明かり取りに10秒ほど当てるのである。老人は書留をオレに手渡すとマントの裾を床に引きずりながら回廊を戻って行く。老人の姿がオレの視界から消え去ると、ドアが音もなく開いて、オレは外に出ることができるのだ。

 どこをどう通って建物の外に出たのか、いつもわからない。まぶしい太陽の下でオレは書留の封を切る。中にはいつも一枚のペーパーが入っていて、9646とか596とか53279という数字だけが書いてある。

 誰がなんのためにオレにこんな書留を送ってくるのか、ペーパーに書かれているこれらの数字の意味するものはなになのか、誰も教えてはくれない。



追記:

このストーリーは、HP「夢幻のスペース・オデッセー」のコンテンツ「夢日記(ショート・ストーリー)」からの転載です。

 「夢幻のスペース・オデッセー」

お立ち寄りいただければ嬉しいです。

Thank you.
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