うそっぷ花ものがたり~其之壱~

モミジ-03a
モミジ-03a posted by (C)トロイ


 晩秋のある日、私はかねてから訪れてみたいと思っていた植物園に出かけた。

 "植物園前"でバスを降りると、植物園の入口までの道の両側の紅葉が美しかった。


 チケット売場には誰も並んでいなかった。

 巷で人気の植物園にしては淋しい感じがした。


 四つあるチケットの窓口は一つだけ開いていた。

 …入園料はおつりがないように、お札でお願いいたします。
  お札は窓口に中に置いてください。…

 と、入園者へのお願いが書いてある。

 入園料は大人も子供も同じ1000yen。

 『大人一枚ください』


 窓口はガラスになっていたが、特殊なガラスなのか、こちらからは係りのひとの顔もチケット売場の室内の様子も見えない。
 こちらからは見えなくても内部からはチケット購入者の顔や室外の風景が見えるのだろう。
 さもないと、チケット係の精神衛生上に悪い影響が出かねない。
 

 私が窓口に置いたお札はまるでコンベアで運ばれるかのように売場の内部に吸い込まれていった。



押し花-01b
押し花-01b posted by (C)トロイ


 これが、私が窓口で受け取ったチケット(入園券)だった。

 映画館などの入場券などとは大違いの極薄のプラスチック製の美しいチケットだった。

 券面には、00000000の数字が刻まれていた。

 『えっ、なにこれ???』


 『ENTRANCE』の矢印に従って、私は歩いていった。

 歩くにつれて、周囲が次第に昏くなってきた。

 しばらく行くと、前方になにやら見えてきた。



花彩-03a花の扉
花彩-03a花の扉 posted by (C)トロイ


 『行き止まり?!
 ここが入口なのだろうか??』

 よく見ると、中央の部分が "ENTRANCE" のドアになっているようだ。

 大人が屈みながらやっと通れるほどの小さなドア。

 『お相撲さんは通れないよなぁ』
 などと、バカなことを思いながら私は両手でドアを開いて中に入っていった。



花彩-03c
花彩-03c posted by (C)トロイ


 中は思ったよりも広かった。
 光はあるのだが、全体的に昏く、なかなか目がその昏さになれてこない。

 振り返ると、私が通ったばかりの "ENTRANCE" が見える。
 ドアはしっかりと閉じられてしまっている。

 これでは、戻るに戻れない。


 蛍光塗料のように妖しく光る"⇒"に従って、私は足元に注意しながら、ゆっくりと歩んでいった。

 進むにつれて、空間が狭まってくる。

 高さも幅も2m強くらいであろうか。


 やがて、展示されている花のひとつが目に入ってきた。



花彩-04b
花彩-04b posted by (C)トロイ


 植物園なのに、花の名前や説明などは一切ない。

 この花を見て、なにをどう感じるのかは入園者のひとりひとりに任されているのだろう。


 四隅の白地に赤い部分が、私には日出国の旗のように思えた。

 この花がいちばん最初に展示されていることを鑑みると、 "国威高揚"を国是とする日出国の"国花"なのかもしれない。



花彩-02_a broken heart(2)
花彩-02_a broken heart(2) posted by (C)トロイ


 トンネルのような回廊(?)をさらに進んでいくと、こんな花が展示されていた。
 
 この花には、なにかしら、片想いのイメージにつながるものがある。
 私は、片想いが片想いのまま終わってしまったときのことを思いだした。

 私がこの花を名づけるとしたら、さしずめ、『叶わぬ想い』というところであろうか。



花彩-10_ベゴニア
花彩-10_ベゴニア posted by (C)トロイ


 私の心の動きを察知したかのような花があった。

 喜怒哀楽のごった煮のような花だ。

 『色即是空 空即是色』の境地には至れるはずもない私の現在の心象風景はこんな感じなのだろうか。



花彩-01c
花彩-01c posted by (C)トロイ


 昏い中をしばらく進んで行くと、回廊(?)の先に、私を導くような花の光が見えてきた。


(つづく)




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Re: No title

どうもありがとうございます。

フィクションです。

こんな植物園があったら、入園者はどんなことを想い、その後、どんな人生を歩むことになるのでしょうね???


この続きの"貮"の内容を踏まえての私のイメージとしては、この植物園は三途の川の渡し場のところにあり、、彷徨える魂をもつひとびとが、閻魔大王の裁きを受ける前に、自己を観照するために必ず入園しなければならないところなのかもしれませんよ。

No title

面白いストーリでした!
架空?
現実?
植物園に入り、夢のような・・
     花園を見て・・
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