すごい!スーパーハイビジョン ライブビューイング ミラノスカラ座 「リゴレット」

NHKの「ふれあいホール」で催された、
スーパーハイビジョン ライブビューイング
ミラノ・スカラ座 オペラ「リゴレット」
を観てきた。

NHKホールの1階席後方(S席)に設置されたスーパーハイビジョンカメラによる520インチの映像(3,300万画素)を22.2ch のマルチチャンネル三次元音響で楽しむという趣向だ。

ミラノ・スカラ座 オペラ「リゴレット」参考INFO↓
 ミラノスカラ座 2013年 日本公演
ダブルキャストの出演者は9月15日を見てください。

オペラ「リゴレット」の感想というよりも、映像と音響についての印象を述べてみたい。

前奏曲が始まると、22.2チャンネルの音響のもたらす世界の一部がすぐに実感できた。

「呪い」と「呪い」をめぐる運命の轍。
思いもよらぬ悲劇的結末を暗示させる深淵からの重い響き。
それらが音となって私を包みこんだ。

ただ、はじめのうちは音が美しすぎて少々違和感を覚えたのは否めない。
上手く言えないが、ホールなどで身体が受ける独特の空気感みたいなものまでは再現できないように思えた。

第1幕
第1場の公爵邸の大広間での舞踏会。
スーパーハイビジョンカメラによる映像(3,300万画素)によるオペラの世界が目の当たりにあった。
舞台装置、衣装がすごい!
観客の目では識別が難しい舞台の細部までが映像として再現されている。

おかしな表現かもしれないが、綺麗に見えすぎる。
実際に見えるよりもはるかに美しく、肉眼では見逃がしてしまうようなところまでがしっかりと見えるのだ。

気になったのは、
マントヴァ公爵の「あれかこれか」やリゴレットの歌声や台詞の焦点が公爵やリゴレットの位置と動きとは少しずれている気がしたことだ。
これだけの大画面では無理なのかなぁ、と。

第一幕 第2場。
家路につくリゴレット。
彼と殺し屋スパラフチーレとのやり取りでは、二人の影の大小の動きによって、ビジネスとしての駆け引きの模様やそれに伴う二人のそれぞれの心の動きが視覚的にも表現されていた。

第2場になり、遅まきながら、22.2ch のマルチチャンネルの三次元音響の威力を私は感じ始めた。

たとえば、
3階の窓からのジルダとその下にいる「自分は貧しい学生」と名乗ってジルダへの熱き愛を告白した公爵の位置関係が音でもしっかりとわかるようになった。
二人の位置する高低の差や距離感までが音から伝わってくる。すごい!
同じように、リゴレット宅に集結している廷臣たちとリゴレットのやり取りのシーンや廷臣たちによるジルダの誘拐のシーンでも、装置の高さをうまく活かした演出に22.2チャンネルの音響がしっかりと対応できていた。

観客に背を向けて歌っているときは、その歌声がちゃんとそのようにに聴こえ、
高いところで歌いながら去っていくときは、歌声がフェイドアウトしながら去っていく方向さえも表現できている。
音の遠近法!
三次元音響はすでにここまで来ているのだ!

御年70歳を超えるレオ・ヌッチの百戦錬磨のリゴレットと若き世代を代表するメキシコ生まれのマリア・アレハンドレスの清純無垢なジルダの息がピタリと合い、親子の愛とそれぞれが求めるものの容が「娘よ、おまえは私の命」にたいへんよく表現されていたと思う。
ジルダと公爵(ジョルジョ・ベッルージ)の「あなたは私の心の太陽だ」もよかった。
ジルダの「麗しい人の名は」も美しかった。

第2幕
第2幕に入ると、私が抱いていた「綺麗すぎる映像」と音の焦点のズレといった個人的な違和感は解消されていて、オペラ「リゴレット」の世界に私は取り込まれてしまっていた。
リゴレットが娘ジルダの身を案じながら「ララ、ララ」を歌うシーンも、リゴレットの動きと向きに歌声の焦点が合っていて、あらためて三次元映像の素晴らしさを感じた。

リゴレットが歌う「悪魔め、鬼め」は見事だった。さすが、レオ・ヌッチだ。
リゴレットとジルダの「いつも日曜日に教会で~娘よ、お泣き」も、第一幕の「娘よ、おまえは私の命」と同じく、情愛にあふれていてよかった。
第2幕幕切れの「そうだ!復讐だ!」が、第二幕のアンコールになった。観客への大きなプレゼントに、NHKホール内は割れるような観客の拍手と歓声!

第3幕
公爵が歌う「女心の歌」。
あまりにも有名な曲だが、私の好きな曲のひとつでもある。

解説者の奥田佳道さんによると、
「女心の歌」は、ヴェルディ自身も自信作と考えていて、その秘匿に努めたそうだ。

スパラフチーレの妹マッダレーナ(ケテワン・ケモクリーゼ)には、オペラ歌手には珍しくエロ気のある魅力があった。
それが、公爵とマッダレーナの関係性にリアリティを与えていた。

色恋沙汰の公爵とマッダレーナ。
その様子を外から覗いているジルダ、そして公爵への復讐心をさらに高めるリゴレット。
四人のそれぞれの思いが繰り広げられる有名な4重唱。
このシーンも、三次元音響の効果が見事に出ていた。

リストの「リゴレット・パラフレーズ」("Rigoletto Paraphrase")を聴いてみたくなった。

余談だが、
「リゴレット」のパリ初演に、ヴィクトル・ユゴーは観客として招かれたそうだ。
第3幕の4重唱を聴いたユゴーは、「舞台の上で四人に同時に台詞を言わせて、四人の台詞のそれぞれの思いや意味合いを観客に理解させるのは芝居では到底不可能だ」と言ったとか。

殺しの残金と引換えに死体入りの布袋を受け取ったリゴレット。
リゴレットが布袋をミンチョ川に投げ入れようとしたとき、
スパラフチーレの酒場兼安宿の3階の部屋の奥から、公爵が満足気に歌う「女心の歌」が聞こえてくる。
高いところにいる公爵の状況がいわば「天国」であれば、布袋の中は瀕死のジルダであることを知ったリゴレットの状況は地上の「地獄」にあたる。

辱めを受けながら、愛する男・公爵の身代わりなって天に召されるジルダ。
ひとり残されたリゴレットが「ああ、あの呪いだ!」と叫び、幕が下りる。
このシーンも、公爵とリゴレット・ジルダとの位置の高低と三人の斜めの左右の距離感がうまく演出されており、その演出に三次元音響も十二分に応えていた。

幕が下りてから、NHKホールの万雷の拍手と大勢の人たちの歓声がなかなか鳴りやまなかったのもうなずける。

スーパーハイビジョンカメラによる520インチの映像(3,300万画素)を22.2ch のマルチチャンネルの三次元音響が創り出す世界。

気がついたら、映像なのをすっかり忘れて、オペラのステージに入り込んでしまった私がいた(笑)



演出:ジルベール・デフロ
美術:エツィオ・フリジェリオ
衣装:フランカ・スクァルチャピーノ

指揮:グスターボ・ドゥダメル

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