青い雨

青い雨-02
青い雨-02 posted by (C)トロイ


 街の明かりに光りながら斜めに落ちてゆくメランコリイな青い雨。

 行き交う人々の影が街の明かりを映す濡れた舗道に長い尾を引いて消えてゆく。

「寒い」とつぶやいて俺はアクアスキュータムのコートの襟を立てた。

 俺はある雑居ビルの入り口にかかっている薄汚れた看板に目をとめた。

<夢と言う名のCAVE>

 "夢"ねぇ~。

 夢はこの世の誰かにつながりを持っているものがもつもので、俺にはまったく縁のないものだった。「夢」を夢見ることができれば、俺も人並みに生きてこられたのかもしれない。


 俺は<CAVE>への入り口の階段を下りていった。階段を下りきったところにドアがあった。ドアを開けると、無数の蛍が暗い室内を縦横に飛び交っていた。

(この時季にホタル?!)

 蛍の光が集まったり離れたりしながら人の形になったりする。

 男性の落ち着いた声が流れてくる。

「ドアを閉じて、ソファーに横たわってください。目を閉じ、心身を開放して・・・」


 室内は、記憶の奥底をなでるような甘いアロマに満ちてきた。


 やがて俺の心が空中に浮遊し、蛍の光と交わり始めた。

 ふわふわとした羽毛のような白い衣をまとったひとりの女性が現れると、ソファーの傍らにひざまずいた。

「おかえりなさい。あなた。子供たちも待っているわ」

(こどもたち?)

 俺はソファーから起き上がった。

 彼女は俺の手をとると部屋の奥に向かって歩きはじめた。

 部屋が次第に明るくなり、俺は白い陽光につつまれた。

 まぶしい光に眼を細めると、子供がふたり立っているのが見える。
 男の子と女の子だ。彼らの愛くるしい笑顔を見て、俺の心も和らいできた。

「俺の子供たち?」

「私たちのことをお忘れになってしまったの?さあ、あなた、私たちを抱きしめて!」

 俺は両腕を広げると女性と子供たちを抱きしめた。綿あめのような甘い幸せに俺はつつまれた。

(俺の家族!)

「さあ、いきましょう」

 妻に促されて私たちは光の奥へ歩き始めた。私の目から頬へ熱いものが流れるのを感じた。

 ・・・


 俺は雑居ビルの入り口の前に立っていた。俺は薄汚れた看板に目をやった。

<孤独という名のCAVE>

 "孤独"かぁ。

(いまさら、なにを…)

 街に立ち込める青い霧雨の中を俺はあてもなく歩いていった。


 街の明かりを映す濡れた舗道に俺の影だけがいつまでも長い尾を引いて残っていた。




追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』↓

   夢幻のスペース・オデッセー

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   夢幻のOdyssey(オデッセー)

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