Light Come, Light Go.

「オマエもっと軽くいかなきゃ」とオレの友人は口癖のように言う。

 彼によると、こうだ。
 人とのつき合いかたや行動のパターン、ものの見かたなどはその人がまとう衣服の軽重に関係しているそうだ。と言うことは、彼の目に映るオレは、いつも重たいものを身に着けているということになる。

「軽さって何だよ」とオレはたずねた。
「軽さはlightなセンシビリテイ、ダサいオマエにゃ縁がないかもな」
「また、そんなこと言って、オレをバカにするんだから」
「バカになんかしてはいないさ。ナオンの着ているものを見てみろよ。あの軽さ、ライトな感じ。あれがいまの世の中の、言ってみれば、流れっていうものさ」
「そんなものかなぁ」
「おい。ほら、そんな風にすぐ沈んじまうから、オマエは重いって言うんだよ」
「ああ」オレは力なくこたえた。
「しょうがねぇなぁ。ここへ行ってみろよ。少しは軽くイケルようになれるぜ」
 友人は一枚のカードをオレに手渡すと、ニヤリと笑って去っていった。

 オレはカードを見た。

     「ライト&スマート ハッピー・プロジェクト」
           You are not today
         what you were yesterday.

(アイツ、また、オレを担ごうとしやがって)
 なにか小バカにされたような感じだった。

 翌日、友人がくれたカードのことがどうしてもアタマから離れず、オレはカードに記されている住所を尋ねてみた。
 繁華街のはずれの薄汚れた雑居ビルの地下にオレの探している店(?)はあった。
 半開きになっているドアを開けると、中は思いのほか明るく、清潔な感じのする部屋だった。

 品のよい中年の男が用件も聞かずに、すべてお見通しといった感じで、
「いらっしゃい。そこにお立ちになって」と部屋の中央を指さした。
 オレの脚が、オレの意思とは無関係に、ひとりでに部屋の中央に進んでしまう。オレの両脚は指定されたところで立ち止まった。

 男がリモコンで部屋の照明を落とすと、赤や青のレーザー光線が部屋中を目まぐるしくかけめぐった。

 男は目を赤く光らせながらオレの身体をスキャンすると、
「いいですよ。出来上がりました」と言ってオレに微笑んだ。
 そう言われても、オレには何がどう出来上がったのかさっぱりわからない。
「なにも、変わってはいないと思うのですが…」
「どうです。軽くなったでしょう?それが変わった証です。街に出ればその軽さが実感できますよ。
 ただ、外に出るときはこのサングラスをおかけになっていないと目に毒ですから、そのことをお忘れにならずに…。それでは、私は失礼します。次の仕事の準備がありますので」
 そう言い残して、彼は奥の部屋に消えていった。

 黒いサングラスをかけて街に出ると、行きかう人々がオレを見ては笑っている。
 なにかオレの顔や衣服についているのかと思い、オレはショーウインドウに自分の姿を映してみた。なにもおかしなところは見つからなかった。
 いたずら書きの紙が背中に貼りつけられているわけでもない。

 変だなと思いながら歩いているうちに、オレはあることに気がついた。
 このサングラスのような色の濃いものをかけている連中はオレを見ても笑わずに通り過ぎていくのだ。

 オレはサングラスをはずしてみた。
「ウワーッ、やられた!どうなってるんだ?!」

 太陽光の下に出ると、オレが身につけているジャケットもブリーフもみな完全にシースルーになってしまうのだ。
 思いもかけぬ恥ずかしさでオレの全身が朱に染まっていくのがオレ自身にも見えた。

 オレは無我夢中で走り出した。

   Happy birthday to you.Happy birthday to you.Happy birthday,dear …♪
   Today.You are not today what you were yesterday.♪
   Yesterday. You were not yesterday what you are today.♪
   Happy birthday to you.Happy birthday to you.Happy birthday,dear …♪

 街中が高らかに合唱を始めた。
 第九の『合唱』のような歌声がどこまでもオレの後を追ってくる。
 
 オレはたまらず、叫び続けた。


He~lp!!-01
He~lp!!-01 posted by (C)トロイ


 He~lp! He~lp!! He~lp!!!




追記:

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