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ETERNITY for SALE

 深夜のカフェの奥まったテーブルで、染みの浮き出ている壁紙をぼんやりと眺めながら冷めたコーヒーをすすっていると、刑事コロンボが着ているようなヨレヨレのコートの老人が近づいてきた。
「同席していいかね」
 オレはいぶかった。
 なぜって…、ほとんどのテーブルが空いているのに、なぜオレのところにこの老人は相席しなければならないんだ、と。
 そんなオレにはおかまいなしに老人は勝手にオレの前に座った。
「あんたさん、永遠を買わんかね?」
「えいえん?オレはそんなもの要らんよ」
 オレは胡散臭そうにコーヒーカップに口をつけた。
「まぁ、そう言いなさんな。永遠ほどすばらしいものはないとは思わんかね」
「そんな子供だましの言葉でオレを惑わそうとしたって…」
「あんたさんは、永遠を信じないのかね。言いたはくないんだが、あんたさん、いつまで生きていられると思う。明日まで、かも。いや、ひょっとしたらあと1時間ってことも。カフェを出たところで、アイツが迎えにきていたり…なんてね。そんじゃ、ワシは失礼するよ」
 老人はニヤリとしながら、「アイツがね」とアイツという言葉を強調した。

 老人は両手をテーブルに置いて腰を浮かせながらオレの目を覗き込むように顔を近づけた。老人の発するメタンガスのような口臭に、思わずオレは顔を背けた。
 そんなオレに、老人は意味深な笑いを浮かべて席を離れた。老人がカフェから姿を消してゆくのをオレは背中で感じとっていた。

 老人の言葉がみょうにオレのアタマにひっかかった。
 オレの三半規管が狂いはじめたのがろうか、壁紙の染みがいやにゆがんで見える。
 そうこうしているうちに、言い知れない不安がオレを襲ってきた。オレはあわててコーヒー代を払い、老人の後を追った。

「おーい、まってくれ~ェ!」
 老人が振り返った。老人にはオレが追いかけてくるのがわかっていたような感じだった。
「気が変わったかね」
「ああ、なんか気味が悪くなって落ちつかん」
「それでいいんじゃ、それで。すこしは聴く耳をもったようじゃな」
「アイツが迎えにくるって、言ったな。永遠が買えるって、どういうことなんだ」
「ワシが説明するより、ほれ、こいつを使ってみるんだな」

 老人はモバイル端末のようなものをコートの左ポケットから取り出して、オレに手渡した。
「なんだこれ?」
「それで永遠が買えるんじゃ」
「どうやって」
「そいつを公衆電話の差込口につなぐと、電源がひとりでに入るんじゃ。そいつの画面の指示に従っていけば永遠はおまえさんのもの、というわけじゃよ」
「そうかい、で、いくらだ?。こいつ」
「操作をしていけば、それも自然にわかるようになっておる。心配せんでいい」
 老人はオレにウインクすると歩き去っていった。

 オレは黄色の公衆電話を見つけ、老人の言ったとおりに端末を操作した。最後にENTERを押した。そのとたん、オレの身体が空気中に漂うホコリのように軽くなり、なにかに吸い込まれていった。


THE WALL_for Blog [Eternity For Sale]
THE WALL_for Blog [Eternity For Sale] posted by (C)トロイ


「ここはどこだ?」
 オレが迷い込んだところ、それは、超高層ビルや街路そのほか目に入るものすべてが3次元CGでできているようだった。音もなければ、匂いもなく、人影も見当たらない、やけに明るいだけの無味乾燥の世界だった。
 ビルの間(はざま)に見えるちっぽけな天空からあの老人の声が聞こえてきた。

「永遠じゃよ、そこが。わかっただろう。おまえさんが永遠を何で買ったか」

 こんな世界への片道切符にオレが支払ったもの、それは…オレにとって、あまりにも大きい代償だった。




追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』に載せたものを少し手直ししました。

   夢幻のスペース・オデッセー

  HPにも来ていただけると嬉しいです。


*心象風景の画像のある「夢幻のOdyssey(オデッセー)」と「for BLOG_心象風景」はこちらです。↓

   夢幻のOdyssey(オデッセー)

   for BLOG_心象風景

他の画像も見に来ていただけると嬉しいです。

Thank you!

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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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Re: No title

トロちゃんさん
どうもありがとうございます。

本格的なSFは私には無理なので、私のは"SFもどき"止まりでしょうか(^^♪

> 永遠を買いたいような気持にもなってきましたが・・
>      怖いような?

そうですね。この世にありえないものを買うのは怖いと思いますよ。

アニメ「ドラゴンボール」では、永遠の命・不老不死をもたらしくれるドラゴンボールを集めるために死闘が繰り返されていきますよね。

自分の遺伝子を保存して、将来、蘇るということも現実に動き出しているし…。

"永遠"は人間の"業"との背中合わせなものなのかもしれませんね。

No title

凄いですね!
SFの世界を見たような?
永遠を買いたいような気持にもなってきましたが・・
     怖いような?

プロフィール

KJYD

Author:KJYD
来てくださったかたがたに、そして『拍手』をしてくださったかたがたに、心から

Alles Gute!

どうもありがとう。


*東京散歩の写真、「心象風景」や「ショートストーリー」そして「575の宙に」などに用いた画像など、『フォト蔵』にアルバムとしてアップしてあります。
よろしくお願いいたします。

Thanks a lot.


お願い:

*フォト蔵の画像保存機能の不具合により、ブログに用いた画像の一部が非表示になってしまうことが度々あります。

 非表示になってしまった全ての画像をフォト蔵で再保存してブログに再表示させても、また、他の画像や同じ画像が非表示になってしまいます(T_T)

 非表示になっている画像がありましたらコメント欄などで教えていただけると有難いです。

 よろしくお願いいたします。

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