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575の宙~筆致輩句(19)~情景-10

from ミケランジェロ_ピエタ-02
from ミケランジェロ_ピエタ-02 posted by (C)トロイ


    *キリストのてのひらにさくざくろかな


    *真夜中の鎌が光るやキャベツ畑


    *畳目の針をにおわす春の雷


    *黒眼鏡かけガムを噛む曼珠沙華


    *白樺の林の月の情死はも


    *春の月鼻を伸ばせば瞞される


    *蔦茂る雨の病理学研究所


    *繃帯の樹が肉となる春の夜


    *断頭の一閃 ゆりかもめ沖へ


    *逆夢であれと見上げる冬銀河



a shrine of stars-01
a shrine of stars-01 posted by (C)トロイ




追記:

*フォト・アルバム『for 「575の宙」』はこちらです。↓

   for 「575の宙」


また、
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おしら様

『美の巨人たち』で『棟方志功 "飛神の柵"』を見て、シャガールの作品から私なりにこんな画像を創ってみた。


おしら様_from シャガール_赤い馬
おしら様_from シャガール_赤い馬 posted by (C)トロイ


ご参考までに、
wikipediaでの"おしら様"のページ↓

 おしら様



『おしら様』をこういうかたちで使ったことを大目に見ていただければありがたいです。



追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』↓

   夢幻のスペース・オデッセー

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バラばらアイソレーション

ばら園-01_confusion(2)
ばら園-01_confusion(2) posted by (C)トロイ



     傷つきやすい薔薇は
     人を遠ざける 棘

     人を遠ざける【棘】は
     癒やしに縋る 性

     癒やしに縋る【性】は
     選択を見誤る 晦

     選択を見誤る【悔】は
     自己弁護をする 虚 

     自己弁護をする【虚】は
     出口を見失う 迷

     出口を見失う【迷】は
     依怙地になる 虜

     依怙地になる【虜】は
     脱皮をできない 孤

     脱皮をできない【孤】は
     自分に甘える 毒

     自分に甘える【毒】は
     傷つきやすい<I>の 糧


     傷つきやすい薔薇は…



isolation-01
isolation-01 posted by (C)トロイ




追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』↓

   夢幻のスペース・オデッセー

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575の宙~筆致輩句(18)~情景-09

from ゴッホ_星月夜
from ゴッホ_星月夜 posted by (C)トロイ



    *ギター爪弾くアラビアの星月夜


    *海よ火山の激りを藏し積乱雲


    *たましいのマッチいっぽん雪霏々と


    *淑やかな獣を隠し薔薇の園


    *通り魔の掌に擦り合わす胡桃の実



羊歯の森-02
羊歯の森-02 posted by (C)トロイ


    *肩ゆすり青羊歯嗤うケモノ道


    *夜重く不安の過ぎる火のボレロ


    *萍の波紋にゆれる運命(さだめ)かな


    *火の島よ地に蟻天に海燕


    *赭き瞳の驢馬春愁の曲馬団



from シャガール_Circus(1970)
from シャガール_Circus(1970) posted by (C)トロイ




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Elvis~forever and ever~

ELVIS-03c
ELVIS-03c posted by (C)トロイ



*好きにならずにいられない恋にしびれて悲しき悪魔やさしく愛してI'm Yours



*冷たい女サレンダー一緒にいようよ嵐の季節あの娘が君なら恋の大穴



*破れたハートを売り物にG.Iブルースボサ・ノバ・ベイビー心の届かぬラブレター



*ドントまずいぜ似合いのカップル恋のおかげでハウンド・ドッグ



*今すぐ家に帰りたい監獄ロックノー・モア早くキッスして僕の天使よ



     E.プレスリーの曲名で綴った一行詩です



ELVIS-04d
ELVIS-04d posted by (C)トロイ





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   夢幻のスペース・オデッセー

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2101年宇宙の旅(1) エイリアン~登場~

私の好きな映画のひとつに『エイリアン』がある。
映画で描かれているエイリアンとは違う人類型地球外生命体の顔の画像を私なりに創ってみたことがある。


2101年宇宙の旅-00_alien-01
2101年宇宙の旅-00_alien-01 posted by (C)トロイ


映画『エイリアン』を映画館で見たときの衝撃をいまも思い出す。
『エイリアン2』はアクション映画。
次の『エイリアン3』には映像・内容ともにガックリ。
『エイリアン4』は『エイリアン2』『エイリアン3』よりは面白かったが第一作の『エイリアン』のときほどのインパクトを私は受けなかった。


2101年宇宙の旅-00_alien-02
2101年宇宙の旅-00_alien-02 posted by (C)トロイ


映画に登場するエイリアンの姿・容に興味のあるかたにはこちらのサイトが参考になるかもしれない。↓

 エイリアン図鑑


2101年宇宙の旅-00_alien-03_one-eyed (#1)
2101年宇宙の旅-00_alien-03_one-eyed (#1) posted by (C)トロイ


wikipediaでの『エイリアン(架空の生物)』のページ↓

 エイリアン(架空の生物)

言葉のお遊びになるが、
"alien"をニホン語とみなして日本語風に発音してみると"アリエン"→"ありえぬ"→"架空"(^^♪


2101年宇宙の旅-00_alien-03_one-eyed (#2)
2101年宇宙の旅-00_alien-03_one-eyed (#2) posted by (C)トロイ


創造的リアリティに富んだ『エイリアン』の映画が製作されるのを待っているのは私だけなのだろうか。




追記:

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どうもありがとう\(^o^)/

爽やかな初夏のような楽しいランチとカフェ。
いつも私に元気をもたらしてくれてどうもありがとう。

Happy talk, keep talking happy talk,
Talk about things you'd like to do
You gotta have a dream, if you don't have a dream,How you gonna have a dream come true?

   "Happy Talk"♪ from ミュージカル『South Pacific』↓

    "Happy Talk"



プレゼントもいただいた。

じゃ~ん!


手付ポーチ-01b
手付ポーチ-01b posted by (C)トロイ


手付ポーチに私の大好きな"IRON MAIDEN"の名。
思わず、うわ~ぉ\(^o^)/

裏も見てと言われて、裏を見ると、


手付ポーチ-01a
手付ポーチ-01a posted by (C)トロイ


これまた、うわ~ぉ\(^o^)/
こちらには"AC/DC"!やった~(#^.^#)

もらって嬉しい特製のハッピーなダブルパンチ! (^_-)-☆


そして、ジャじゃ~ん)^o^(


ZARA_Tシャツ
ZARA_Tシャツ posted by (C)トロイ


星のT-シャツ!Yeah !! (#^.^#)
ハッピーなトリプルパンチに私はK.O.されてしまった。

When you wish upon a star
Make no difference who you are
Anything your heart desires
Will come to you

   from "When You Wish Upon a Star"
  ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌で有名。jazzでも、よく演奏されるスタンダ~ドの曲。↓

    "When You Wish Upon a Star"



帰宅してから、ポーチの中に爪切りが入っているのに気がついた。
新しい爪切りを買おうかなぁと思っていたのでドンピシャ(^^♪

お礼のメールをしたら、『ギタリストの必需品でしょ』とのこと。
私は大好きなロックの曲をエレキギターのレッスンで先生といっしょに弾いて楽しんでいる。
私はギタリストではないけれど、「ギターを頑張って! もっともっとギターを楽しんで♪」という温かい心遣いが嬉しかった。


いただいた爪切りで爪を切って、星のT-シャツを来て、今日は出かけるぞ~(^_-)-☆

往きは"AC/DC"を、帰りは"IRON MAIDEN"を聴きながら…♪

テーマ : 写真日記
ジャンル : 日記

BALLad OF NoBody

舞踏会-00a
舞踏会-00a posted by (C)トロイ


     あなたの
     舞踏会の手帳に記されていた
     あるひとつの名 私の…

     あなたの
     舞踏会の大広間に通された
     あるひとりの男 私は 

     あなたを
     眺めていただけで
     あなたと
     踊れるはずもなかった 私に

     永い時間
     遠い空間

      私は NoBody


     あなたの
     舞踏会の手帳に記されている
     あるひとつの名 私の…

     あなたの
     舞踏会の大広間に通される
     あるひとりの男 私は

     あなたを
     思っているだけで
     あなたと
     踊れる瞬間(とき)もこない 私に

     苦い時間
     渋い空間

      私は NoBody


     あなたの
     舞踏会の手帳に遺されている
     あるひとつの名 私の…

     あなたの
     舞踏会で非在の在としての
     あるひとりの男 私の
     軽い存在
     重い未来

      私は NoBody


     あなたの
     舞踏会の招待状

     あなたと
     踊れる機会もなく
     あなたと
     踊れた夜会もない

      私は NoBody


     かつて死に
     いつかまた死ぬ
     もうひとつの名 私の

     名前
      NoBody

     無という価値の代名詞



on stage-03a
on stage-03a posted by (C)トロイ




追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』↓

   夢幻のスペース・オデッセー

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575の宙~筆致輩句(17)~情景-08

蝌蚪-02b
蝌蚪-02b posted by (C)トロイ



    *蝌蚪群れて軍靴の響く夜とならむ


    *霧ごめの森の兵舎の跡地かな


    *躑躅燃ゆ恋の波紋の行方はも


    *薔薇園の侏儒が顔出す天気雨


    *梧桐の葉の出づる夜の逢瀬かな


    *裏庭の竹の皮脱ぐ精神科


    *蛇の舌ちらちら赤し広島・長崎


    *柘榴の実色づく死者の思いかな


    *秘め事の熱き口づけ柿紅葉


    *裸木の空よ父母亡き故里よ



裸木-01d
裸木-01d posted by (C)トロイ



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   for 「575の宙」


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愛のかたち~Marionette and Crawfish~

あやつり人形c-01b
あやつり人形c-01b posted by (C)トロイ


     グリーンの制服のjailerに
     "Love Me Tender"
     を歌っている あなた
     は
     横縞のピンクの囚人服

     …おねがい 冷たくしないでね
       おねがい 冷たくしないでね
        Don't be cruel to a heart that's true.
        I don't want no other love.


     ピンクの収監服のprisonerのあなたに
     "Stuck On You"
     を歌っている わたし
     は
     横縞のグレーの囚人服

     …破れたハートを売物に
       破れたハートを売物に
        Who wants to buy a heart,one broken lover's heart.
        One broken lover's heart for sale.



     あなたに恋する
     わたしはMarionette

      Yes,I'm your puppet,my heart is in your hand,
      One twist of wrist and I jump to your command.


     わたしは恋する
     愚かなザリガニ

       They call me Poor Boy.
       But I ain't lonesome and I ain't blue.



     看守
     に
     熱を上げている
     あなた
     
     あなた
     に
     振り向いてほしい
     わたし

     
     あなた
     が歌う
     "Kiss Me Quick"

     わたし
     は歌う
     "Always On My Mind"


     わたしたち
     は
     Marionette
     の
     Crawfish



crawfish in love-01
crawfish in love-01 posted by (C)トロイ



*歌詞引用:from 「Don't Be Cruel」・「One Broken Heart For Sale」・「Please Don't Drag That String Around」・「Poor Boy」



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*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』↓

   夢幻のスペース・オデッセー

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Edelweiβ(エーデルヴァイス)

 日曜日のカフェ「モン・プチ」のドアを開けると<愛の歓び>を謳うシャンソンが流れていた。エルヴィスのヒット曲「Can't Help Falling In Love」の元歌だ。この曲は映画「マリーアントワネットの首飾り」の中で、マリーアントワネットが歌うシーンに使われていた。

 店内は空いていて、私は一番奥の窓際の席に座ることができた。私はブレンドをオーダーした。この店では、私的にはブレンドがいちばんのお勧めだと思っている。というのは、私の心模様によってその味が微妙に変化するからだ。
(今日の味は…)
 と、運ばれてきたコーヒーに口をつけるとマイルドなほろ苦さが私の口の中に広がった。
(この味は…?)
 それは私の中で大切なものが毀れたときの切ない味だった。
 

 思い込みにはいつも裏切られる。思い込みが強ければ強いほど毀れ方が酷くなる。そう分かってはいても、人が思い込みの呪縛から逃れるのは並大抵のことではない。
 思い込みではない<思い込み>という言葉のパズルのような世界があってもいいのではないかと私は思う。



花のことば_エーデルワイス-01
花のことば_エーデルワイス-01 posted by (C)トロイ


 緑のカーペットが敷き詰められた高原。透き通るような青い空。マーガレットの白。タンポポの黄。放牧された牛たち。草原に身を横たえて眼をつむるとカウベルの音が眠気を誘ってくる。ぼくたちはそんな世界にいるのだと思っていた。

 当時、ぼくは大学生。麓の町に住んでいた。彼女の屋敷は聳え立つ山の頂き付近にあった。岩肌を深く削り取った氷河が青白く光っている山はウェディング・ドレスをまとったように白く輝いていた。麓から高原駅までは一般の鉄道で行くことができる。そこから山頂へはプライベートな登山電車で急勾配を昇っていく。ぼくはこの登山電車に乗ったことがなかった。正確に言えば、乗ることは出来なかった。

 ぼくが彼女に逢ったのは日が沈みかけた高原駅のホームのベンチだった。ぼくは麓への最終電車を待っていた。そんなぼくの目にブルーのベンチに腰をかけている白いレースのワンピースの彼女の姿が飛び込んできた。透きとおるような白い手にはコバルト・ブルーの表紙の本が…。
 緊張にこわばりながらぼくは彼女に歩み寄ると、深く一呼吸してから声をかけてみた。
「こんにちは。麓、までですか」ぼくの声は緊張を隠しきれなかった。
「いいえ、、上です」本から顔を上げると彼女は微笑んだ。
「上!す、すみません。読書の…邪魔をしてしまって」これだけ言うのが精一杯だった。
「あ、いいんです。待ち時間があるので読んでいただけですので」
 彼女の包容力なのであろうか、初対面なのにぼくは不思議なほどいろいろな話をすることができた。僅かな時間ではあったが、本のこと、映画のこと、音楽のことなどを話した。
 <上>の人だけのことはある、とぼくは思った。どんな話題にも彼女の感性が溢れていた。ぼくは彼女を好きになってしまった。その一方で、彼女を好きになってもどうしようもないことも感じていた。<上>の人たちと<麓>の人間とは所詮住んでいる世界が違うからだ。

 お互いの電車がホームに入ってきたとき、見えない力に突き動かされたかのように、ぼくはぼくの電話番号を書いたメモを彼女に差し出した。
「あ、あなたの、電話番号を…」
 ぼくが言い終わらぬうちに、彼女はぼくのメモは受け取らずに小さな鍵をぼくに手渡した。
「電話はないのです。手紙でご連絡をさせていただきします。それはメール・ボックスの鍵です」
 彼女は登山電車の入線するホームの鉄柱に設けてあるライト・ブルーのメールボックスを指差した。

 次の日からメールボックスを覗くのがぼくの楽しみになった。ドキドキしながらひんやりとしたメールボックスを開けるときのぼくの心の高鳴りや高揚した気持ちはいまでも鮮かに蘇ってくる。

 ぼくは晴れた日に草原に寝転がって彼女からのメールを読むのが好きだった。天から祝福されているような感じがしたからだ。天気が悪い日は駅前のカフェで手紙を読んだ。手紙を読むと返事を書き、それをメール・ボックスに投函して麓の町に戻る。そんな日々であった。

 彼女から高原駅で会うという返事をもらったときは、喜びでぼくの身体が自然にふるえてきた。草原に寝転がって喜びを噛みしめようとしても、横隔膜が小刻みに震え始めてぼくはすぐに起き上がってしまう。寝転がっていられずに立ち上がってしまう。ぼくはどうしていいのか分からないほど落ち着きをなくしてしまっていた。ぼくの返信の文字も興奮で震えていたに違いない。こんなラブストリーがぼくに微笑むこと自体が奇跡に近かった。

 彼女の都合のついたときに、ぼくたちはこの高原駅で会い、高原の花々に囲まれて二人の時間を過ごし、高原駅のホームで再会を約してそれぞれの家路に向かった。彼女は<上>に、ぼくは<麓>へ。

 彼女の時間が許すときは、麓の町まで下って映画を見たり、天井桟敷の学生の席でコンサートを楽しんだり、学生に人気のある安くて美味しい店で食事をしたこともあった。
 
 ぼくはぼくの時間が輝き始めたのを感じた。時間が輝き始めると、人の存在自体も輝くらしい。そして周囲の自然はもちろん見慣れた建物やなんの変哲もない小道さえも意味を持ち始めてくる。
「オマエ、最近、いいことあったな」
 友人がぼくの肩を小突いてニヤリとした。友人から冷やかされても、ぼくは別に悪い気はしなかった。それどころか幸福感がぼくの身体を走り抜けた。


 そんなある日、不図したことで、彼女とのことはぼくの思い込みに過ぎないのかもしれないと感じたことがあった。
 高原駅の近くにあるヒュッテ風のレストランで食事をしていたとき、彼女がどこかしら落ち着かない様子なのにぼくは気がついた。そのときはぼくの話題に興味がないからだろうと思った。
 高原駅で彼女を見送ったとき、彼女はぼくのほうに振り向くこともなく登山電車の車輛の中に消えていった。
 <麓>の人間に見送られているのを<上>の人たちに見られるのが彼女は嫌なのだろう、ぼくはそう想っていた。
 しかしその日は違っていた。すべてはぼくの思い込みによるものであり、彼女はぼくのことをそれほど思ってはいないのではないかという想念が、ぼくの脳裏にはじめて過ぎった。
 ぼくは有頂天になりすぎていたのだ。

 その後も数日間は手紙のやり取りが普段通りに続いていた。手紙の内容からは特に変わったことは感じられなかった。


 あの日は朝から雲行きが怪しかった。
 ぼくはいつもの通りに高原駅に出かけメールボックスを開けて手紙を取り出した。
「私が大切にしていた別邸のお花を見にいくことができなくなりました。お手紙はしばらく…。お許しください」そう書いてあった。
(大切にしていた別邸の花とはどんな花なんだろう?)
 <花>に託された意味も分からないまま、ぼくは乏しい語彙のつなぎ合わせて心から見舞いの手紙をしたためた。

 3日後、メールボックスに彼女からの返事が入っていた。
「心配させてごめんなさい。いますこし元気になりましたら、また、お手紙を書きます」
 ぼくは彼女が悲しみの淵に沈んでしまってはいないかと心配だった。
 彼女がなにか書いてくるかもしれない…無駄だと思いながらも、ぼくは毎日メールボックスを開けに行った。もちろん、手紙は入っていなかった。

 数日後、意を決してぼくは彼女に手紙を書いた。「悲しみの殻の中に閉じこもってしまってはなにも始まりません。先に進めません。どうか元気を出して…」
 2日後、彼女から返事が来た。読むまでもなかった。彼女の手紙はぼくが彼女に<禁じ手>を使ってしまったことを暗示していた。ぼくの存在がそしてぼくの手紙が彼女の精神的負担になっていることが文面から伝わってきた。
 彼女は<哀しみ>で完全武装をしていた。そうすることで彼女は彼女の<悲しみ>がいかに大きいものであるかを自ら確認しているようにぼくには思えた。ぼくが返事を書く必要もなかった。書けばさらに<禁じ手>を付け加えてしまうからだ。

 翌日、ぼくはメールボックスの鍵を返しに高原駅まで出かけた。
 鍵をメールボックスに入れる前に今一度メールボックスを開けてみると、彼女からの手紙が入っていた。そこには、ぼくを傷つけたことに対する彼女からの謝罪が述べられていた。ぼくは短い返事を書いた。「ぼくは大丈夫です。分かっていますから…」。
 迷ったあげく、ぼくは鍵を返さずに麓にもどった。

 次の日、メールボックスに彼女から手紙が届いた。元気になったことが述べてあった。ぼくは安心した旨を返事に書いたが、ぼくの心が以前のようには文面に乗らないのを感じた。ぼくは「傷ついた」のではなく、ぼくの中のなにかが「毀れて」しまったのだ。
 その手紙をメールボックスに入れたぼくの様子を見かねたのか、老いた駅員がぼくに銀色の帷子(かたびら)を貸してくれた。
「これを着て上に行ってみなされ」
「???」
「ニーベルングの指輪の、ほれ、あの帷子みたいなものじゃ」
 ぼくは礼を述べて、その帷子を身につけると登山電車に乗り込んだ。だれもぼくには気がつかないようだった。

 電車は途中から岩壁をくり貫いた長いトンネルに入った。耳の鼓膜がおかしくなってきた。頭の中がふわーっと浮いたような感じだった。空気が薄くなってきているのが分かった。
 途中で2箇所、3分ほど停車するむねのアナウンスがあった。どちらの駅も乗降客はいなかった。何のための停車なのかぼくには分からなかった。
 駅のホームには、自然にできた岩壁の穴なのか人工的に岩壁をくりぬいたものなのか、外の景色を眺められる箇所があった。
 わずかだがぼくには十分な停車の時間を利用して、そこから山間に静かに眠る森と湖の光景を眺めた。
(別世界!)
 ぼくは、<上>のひとたちと<麓>のひとたちの住む世界の違いを実感させられた。


 from ノイシュヴァンシュタイン城-02c
from ノイシュヴァンシュタイン城-02c posted by (C)トロイ


 頂上駅に着いた。寒さに身体が震えた。乗客はそれぞれ岩壁をくり貫いたGang(通路)の中に姿を消していった。ぼくは本能的に「館へ」と書かれた標識に従ってGang(通路)を進んでいった。

 しばらく行くと、氷河を削って造った氷の宮殿の大広間に出た。その奥に小さな部屋がいくつもあり、青白い光を放つ空間の氷壁の中には王冠を戴いた王や王妃が蝋人形の立像のように静かに眠っていた。

 さらに奥に進んでいくと白いライトに照らされた瀟洒な小部屋があり、部屋の中央に氷のデスクが置かれていた。引き出しを開けるとコバルト・ブルーの表紙の日記が入っていた。
 イケナイとは思いながら、ぼくは好奇心からその日記を開いてみた。字体と日付から、日記が彼女の手によって書かれたものであるのがわかった。そこには、想いを寄せているひとへの彼女の熱い胸の内が愛に溢れた言葉で書かれていた。
(やはり、なぁ。ぼくを喜ばそうと、ぼくを楽しくさせようとして、ぼくに合わせてくれていたんだ。彼女の優しさかぁ…)
 ぼくは日記を元通りに引き出しの中に戻し、そっと引き出しを閉めた。
 ぼくの心は空っぽなのにぼくの身体は重かった。

 ぼくは氷の宮殿を後にした。
 高原駅に近づくにしたがって、酸素が充分に身体に行き渡ってきたためか、ぼくの思考力も平常に近いところまで戻り始めてきた。高原駅に着くと私は駅員に帷子を返しにいった。
「どうも、ありがとうございました」
「少しはこいつが役に立てたかのぉ」
「ええ」
「んで、お分かりになったことじゃろうが…プリンセスは、エーデルワイスの世界をプリンセスにもたらしてくれる…、そんな夢を育んでいきたかったのじゃろうな」
(プリンセス!!)
「そのようですね、どうもありがとう。あっ、この鍵、プリンセスに返していただけますか」ぼくは努めて平静を装って言った。
「それはわしにはできねぇ。あの郵便受けにオマエさんが入れればいい」
「分かりました。では、失礼します」自分の声が変にこわばっているのがぼくにもわかった。

 メールボックスの上部の口から鍵を中に落とすと、ブルーのメールボックスが火のように赤くなり、やがて氷のように滴りを落としながら融けて消えていった。
 ホームの鉄柱にはあのライト・ブルーのメールボックスの代わりにどこにでもありそうなブリキの赤い郵便受けが架かっていた。…そう、ぼくの目と鼻の先に。

 ぼくはなにかが分かりかけていた。ぼくは山の頂きを見上げた。氷河の青白い色がさみしさを発光しているように思えた。

 ぼくは麓までの電車に乗った。車窓から眺める高原の風景は涙がにじむほど美しかった。白いマーガレットの群落がウェディング・ドレスのスロープのように思えた。
 不意に私は背後に彼女の視線を感じた。私は身をよじりながら車窓の斜め後方にある山頂を見上げた。私の網膜にはノイ・シュヴァンシュタイン城を思わす優美な古城がはっきりと映っていた。
 中央のErkerfenster(出窓)の向こうに、哀しみの影をまとった白いものが見えた。その姿はまるで美しい一羽の白鳥の姿のようだった。
(彼女だ!)
 ぼくはそう直感した。
「し・あ・わ・せ・を・ど・う・も・あ・り・が・と・う。…。さ・よ・う・な・ら。お・げ・ん・き・で」
 私の耳に彼女の心の声が届いてきた。ぼくの心の中の氷河が溶けていき、エーデルワイスの白い花が一面に咲き始めた。ぼくも心の中で彼女に答えていた。
(ぼくも幸せでした。どうもありがとう。プリンセス、お元気で…お幸せに!!)
 胸の奥から熱いものが込み上げてきた。
(プリンセスが別邸で育てていた花とは…もしかしたらぼくらの花だったのだろうか。プリンセスはぼくが日記を見ることを分かっていて、あの日記を書いたのかもしれない。そしてあの駅員もすべて承知の上で…)
 夜の鹿の尻声のような汽笛が、高原の澄み切った空気を小刻みに震わせながら後方の景色の中に融け去っていった。


花物語_エーデルワイス-01
花物語_エーデルワイス-01 posted by (C)トロイ


 私は冷めたコーヒーを一息に飲み乾すとカフェ「モン・プチ」のドアを開けた。初夏のさわやかな風が心地よかった。
(ブレンド、次はどんな味になるのかなぁ…)

 私は「Can't Help Falling In Love」を口ずさみながら、U-Bahn(地下鉄)に乗るために人気のないの暗い階段を下りて行った。




追記:

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   夢幻のスペース・オデッセー

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575の宙~筆致輩句(16)~情景-07

路地_暮色-01
路地_暮色-01 posted by (C)トロイ


    *路地に鳴るピアノ三鬼忌暮れなずむ


    *母の愚痴静かに聞きし春炬燵


    *抜きん出し真紅の薔薇の自負心よ


    *炎天を澱みに映し船溜


    *あぶれたる蚊が血を求めくるおどろ


    *鶏頭よマサイの狩りし獅子の血よ


    *鎌倉の海へ熄えゆく虎落笛


    *枯蓮の静けさにある夕べかな


    *沖を見る冬の男の黒鞄


    *犇めきて冬陽を奪い合う甍


甍-07
甍-07 posted by (C)トロイ



追記:

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ECDYSIS(脱皮)

a seed of love-01「起」a
a seed of love-01「起」a posted by (C)トロイ


     さみしさ
     受容のハードルが低くなる

     かなしみ
     判断のフォーカスが狂い出す

     むなしさ
     意志のブリッジが流される


a seed of love-02「承」
a seed of love-02「承」 posted by (C)トロイ


     <愛>・<I>・<I>・<愛>

     my choice だから 信じたい
     my choice ゆえに 泳げない

      信じたい<I>は
          <愛>の 過去の時化に弄ばれる
      泳げない<I>は
          <愛>の 未来の藁を掴もうとする

     <愛>が次第に翳んでくる
     <I>はやがて翳ってくる


a seed of love-03「転」a
a seed of love-03「転」a posted by (C)トロイ


     わたしの衣装
     愚かさ
     日ごとに募る 淋しさ 虚しさ

     わたしの宿木
     癒やし
     日常化する 甘え 依存

      ささやきかける
      逃げ水 流砂 底なし沼

     わたしが わたしに験されている
     わたしを わたしが選んでいる

     

a seed of love-05「結」a
a seed of love-05「結」a posted by (C)トロイ


     わたしは さなぎ
     わたしは わたしを脱皮する
     わたしに 脱皮する



追記:

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どうもありがとう。


*東京散歩の写真、「心象風景」や「ショートストーリー」そして「575の宙に」などに用いた画像など、『フォト蔵』にアルバムとしてアップしてあります。
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 非表示になっている画像がありましたらコメント欄などで教えていただけると有難いです。

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