夢のかたち~根の国奇譚(3)_オレンジ色の月~

 Where am I ?

 目の前には広大な台地があるだけだ。日が沈みゆき、月が上るまでの時間。存在と非存在のしじま。地平線を眺めていると、足元がおぼつかない感じがする。ここに立っているオレは、ほんとうにオレなのだろうか。来たことのない場所なのに、デジャブ的な感覚さえある。めまいに似た不確かさも感じる。船上から水平線を眺めるときのように、地平線がゆったりとゆらいでいる。

 巨大な黒い鳥が1羽、私の頭上をかすめるようにして地平線に向かって飛んでいく。飛翔の風とシルエットを残しながら、黒い鳥は地平線に呑みこまれていった。
 やがて、地平線の彼方からぼんやりとした光がさしはじめ、その光は次第に力づよさを増してきた。地平線からの一条の光の帯が広がって、大地が淡い紫色に染まっていく。

 しばらくすると、地平線からゆらゆらと円い月が顔をのぞかせた。オレンジ色の月だ。月はゆっくりと弧を描きながら、台地の果ての宙を上っていく。自然というキャンバスに描かれた紫がかかった赤い色の台地とオレンジ色の月…自然が描く超自然的な光景がそこにあった。

from Max.Ernst_The Entire City
from Max.Ernst_The Entire City posted by (C)トロイ

 川下に渡しが見える。 オレは急に対岸に渡ってみたくなった。

 渡しにつくと、川の両岸には木の柱が立ててある。柱の頭の部分に滑車のようなものが取り付けられていて、対岸の柱と互いにロープで結んであった。柱は心なしか川側に傾いている。渡し舟はそのロープに繋がれたもうひとつのロープによって結ばれており、結ばれたロープを手繰ることによって向こう岸に渡れるというわけだ。いわば谷間に架かったロープと籠、そんな感じだった。

 渡し舟にも渡し場の周囲にも人影がなかった。
 (一人で行くしかないな)

 岸を離れると、川の流れが見た目よりも早いことがわかった。舟は川下に押し流されながらも、意外に軽くロープを手繰ることができた。
 ロープを手繰って対岸に近づいているはずなのに、対岸は遠くなるばかりだった。向こう岸はやがてオレの視界から消えてしまった。不安に駆られて振り返ると、渡し場も木の柱も視界から消えている。渡しのロープと渡し舟を残して、すべてが闇に沈んでしまったかのようだった。
 (このまま行ってみるしかないのかなぁ)

 状況がまったくつかめないまま、オレはロープを手繰り続けた。胎内回帰をしているような不思議な感じだった。振り返ると、星ひとつない漆黒の宙にオレンジ色の月だけがその輝きをいっそう増していた。

 遠く、川下で花火を打ちあげるような音がした。花火だと思ったが、オレの知っている花火とはどこかしら趣が違う。

HANABI in [ニライカナイ]
HANABI in [ニライカナイ] posted by (C)トロイ

 ここは、いったい…どこなのだ。



追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』に載せたものを手直ししました。

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夢のかたち~根の国奇譚(2)_藤~

     引き裂かれ
     地底に閉された
     十二単の恋慕

     もがき出た
     木肌に遺された
     闇の王の愛撫

     時を超え
     房に籠められた
     麗人の情念

     地の底の
     叫びの光(かげ゙)に染められた
     わたしのこころ

     生まれくる
     わたしの容(かたち)と色合いの
     真夜の木霊

木霊
木霊 posted by (C)トロイ


追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』からの転載です。

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夢のかたち~根の国奇譚_rebirth~

     たましいを よみがえらせる
     おぼろな つきが かかっている

     やみの じょおうが
     よるを かっくうし
     はんぐぐらいだーの かまが
     するどく ひらめく

     ちにおちた
     ほしが…
     ないている

     あおい なみだが たまり
     いけになり みずうみになり
     みなもの
     つきが やさしく ゆれた

真夜の月
真夜の月 posted by (C)トロイ

     かげろうが
     うかし…
     りんぶする

     おぼろな つきが うかんでいる
     たましいが よみがえる


     おぼろな つきが かかっている
     
     たましいが うかんでいる


追記:

*私のHP『夢幻のスペース・オデッセー』からの転載です。↓

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愛のかたち~単眼のpuzzle 複眼の dilemma~

     大好きだからこそ
     待っている時間は寂しさに彩られ
     私の思いを吹き消そうとする風になる

     信じているからこそ
     待っている時間も彩りを失わず
     私の希望に呼びかけてくれる光になる

     待っている時間は単眼のパズル
     大好きなのにどうしようもなく
     信じているのに答えがでない
     待っている時間は複眼のジレンマ


Blue Rondo à la mode
Blue Rondo à la mode posted by (C)トロイ


     あなたの心を揺り動かすには 
     なにが私に欠けているのか?
     あなたの気持ちが羽ばたけないのは
     私のなにかが重すぎるのか?


a divine revelation-02a
a divine revelation-02a posted by (C)トロイ


     愛しているからこそ
     待っている時間は切なさに彩られ
     私の願いが容を失いがちの空になる

     信じているからこそ
     待っている時間は息吹を失わず
     私の夕べを燈してくれる星になる



     I'm so long waiting for YOU.




追記:

*私のHP「夢幻のスペース・オデッセー」からの転載です。「リンク」(⇒)から来ていただけると嬉しいです。  


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夢のかたち~SPACE ODYSSEY~


SPACE ODYSSEY-01 THE GATE
SPACE ODYSSEY-01 THE GATE posted by (C)トロイ

DaysNieLand 宇宙館
アトラクション 「SPACE ODYSSEY」
2001年 未知への扉
ENTRANCE


space firefly
space firefly posted by (C)トロイ

宇宙船 「space firefly」
カウント・ダウン Three Two One Zero
銀漢の stardust 意識下の旅
Blast off!


O-GEAR !
O-GEAR ! posted by (C)トロイ

a fixed star 「O-GEAR」
宇宙の戦士 ロケンロー
熱き血潮の defender 
Peace!  


SPACE ODYSSEY-02b_supernova
SPACE ODYSSEY-02b_supernova posted by (C)トロイ

シバ神-03
シバ神-03 posted by (C)トロイ

まばゆい妖精「supernova」
仮面舞踏会 シヴァの女王 ナタラージャ
夢声の舞台 カプセル「eros」
Firing!


エイリアン
エイリアン posted by (C)トロイ

氷の世界 「エイリアン」
宇宙を統べる 無性の神
見果てぬ夢に もっと光を
Frontia


SPACE ODYSSEY-01b
SPACE ODYSSEY-01b posted by (C)トロイ

昏くなる もっと光を
もっと光を


ひ か  り   w..o,,,




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太陽そして砂嵐とオアシス

 時季にもよるが、砂漠にある禿山が連なる丘陵の稜線からゆっくりと昇ってくる太陽は大きい。日本で目にする太陽の大きさの数倍はある。
 地理的条件や時季的条件と時間的条件そして気象条件が違うと、太陽の大きさそして太陽のもっている象徴的雰囲気がこんなにも違って見えることに驚くとともに、一種の感動さえ覚えた。

 情況と景観は違うが、『遠き山に日は落ちて』に込められたドボルザークの思いや想いの一端に私も触れることができたような気がする。


 個人的な感覚になるが、サウジアラビヤに来てから、ベートーベンの『歓喜の歌』が砂漠の青空に実によく似合うのに気がついた。

 金曜日、私は泳げもしないのに、プールに行く。

 プールサイドでデッキ・チェアに身をゆだね、砂漠の深い青空の下で燦々と降りそそぐ光のシャワーを浴びながら、眼をつむり心を開放してヘッドホーンステレオから流れてくるベートーベンの『歓喜の歌』を聴いていると、天使たちの合唱が天上から舞い降りてきて私を包み込んでくれる。
 ラヴェルの「水の戯れ」もプールサイドでいつも聴いていた。この曲も砂漠という環境で聴くと、日本で聴いていたのとは違う表情をみせてくれる。
 
 そんな話を運転手に話したら、
 石油コンビナート・サイトからそう遠くないところにオアシスがありますよ。行ってみますか?、と運転手。
 私はオアシスで「歓喜の歌」を聴いてみたくなり、運転手にそのオアシスに行ってもらうことにした。

 クルマは、対向車がほとんど来ない炎天下の砂漠の道をひた走る。
 途中で、砂漠に放置されたままになっている一頭の駱駝の屍骸があった。死んだ駱駝をブルドーザーで運ぼうとしているところを目にしたこともある。

camels in SAUDI ARABIA
camels in SAUDI ARABIA posted by (C)トロイ

 駱駝と言えば、私たちの前を一頭の駱駝を荷台に乗せたトラックが走っていたことがある。
 駱駝は後ろ向きに載せられていて、私たちのクルマがトラックの間近まで近づくと、その駱駝が私たちに向かって頑丈そうな歯をむき出しにして笑うような仕草をする。トラックから少し離れて、また近づくと、また駱駝が同じ仕草をする。運転手が面白がって、トラックに近づいたり離れたり…。
 駱駝にしてみれば、私たちに近づくなと警告をしていたのだろう。
 ラクダは危険だからむやみに近づくなと言われたことを思い出す。

 真っ直ぐな道の前方に、砂塵が舞い上がり茶色っぽくなっているのが見える。
 砂嵐だ。やばい。

 周囲がにわかに暗くなり、無数の砂のつぶてが容赦なくフロントガラスを叩きながらハジケ飛んでいく。運転手がヘッドライトを点灯しても、ほんの数メートル先しか見えない。道は砂嵐の胎内にすっぽりと呑み込まれてしまった。

 運転手はスピードをデッド・スローに落としはしたが、クルマを止める気はまったくない。道から逸れたりしたら、ラクダしか歩くことができない砂の世界にクルマごと捉まってしまうというのにだ。
 クルマを運転するものからすれば、砂嵐の中でクルマを止めることではるかにヤバイ事態になるのは避けたかったのだろう。

 運転手は胸がハンドルにつくほど身体をフロントガラスに近づけ、前方を覗き込むようにして、道の真ん中から逸れないようにクルマを走らせていく。「走らせる」というより、「動かしていく」と言ったほうが感覚的には正しいだろう。
 クルマが道路から逸れないこと、対向車が来ないことを私は祈るしかなかった。

 パッと、視界が開けた。砂嵐を通り抜けたというよりは砂嵐のほうが通り過ぎてくれたといった感じだった。
 ほんの数分のことであったが、ここでは砂嵐が主役であることをあらためて思い知らされた。

 街へと続く道を右側にそれてしばらく行くと、クルマは砂漠の中にある窪地に入った。窪地といってもケタが違う。幅が数百メートル。長さは見当もつかない。
 
「これ、河ですよ。雨が降るとここは通れなくなる」と運転手。
 そう言えば、そんな砂漠の河の写真をどこかで見た覚えがある。もしかしたら、映像だったかもしれないが…。

砂漠_心象-02砂漠の河
砂漠_心象-02砂漠の河 posted by (C)トロイ


 窪地を抜けると、黒い幹だけを残したナツメヤシの樹がところどころに見える。まるで灼熱の太陽にじりじりと焼かれたかのような感じである。かつてのオアシスの名残りなのだろう。

 やがて前方に緑の塊が見えてきた。オアシスだ。

 オアシスは、大きいとは言えなかった。それでも、オアシスの中に身を入れると、空気そのものが砂漠とはまったく違っているのがわかる。
 空気がやわらかくて、気持ちいい。もちろん、温度も違う。木陰でまどろむ人たち。私も寝転がってみた。

oasis-03
oasis-03 posted by (C)トロイ
 
 パラダイス…。緑と水の有難味が実感できる。
 目を瞑ると心地よい静寂の時間が流れていく。

 オアシスで「歓喜の歌」を聴きたいと思ったのは野暮だった。愚の骨頂だった。
 言葉の使い方がおかしいと笑われそうだが、オアシスは "silence is gold" の世界なのだ。
 
 オアシスから、赤茶けた小高い山の連なりが見える。その裾野を砂嵐の砂塵がゆっくりと舞い上がり、山肌を流れるように覆っていく。

 青空から響いてくる「歓喜の歌」を巻き込みながら。



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夢のかたち~水の調べ~

         『蜻蛉に水の記憶の沙漠かな』


水の調べ
水の調べ posted by (C)トロイ


灼熱の砂漠 サウジアラビア
金曜日

寝静まる真昼のキャンプ
45℃

まっすぐに伸びる道 ゆらめく路面
陽炎

キラキラと光りを放つ 砂漠の湖水
蜃気楼

雲もなく 鳥影もなし どこまでも青い空
時間

足元に貼りついた 黒く縮んだ影の私
存在


夕陽
静止した世界を明日につなぐ休息日


purple land
purple land posted by (C)トロイ



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プロフィール

KJYD

Author:KJYD
来てくださったかたがたに、そして『拍手』をしてくださったかたがたに、心から

Alles Gute!

どうもありがとう。


*東京散歩の写真、「心象風景」や「ショートストーリー」そして「575の宙に」などに用いた画像など、『フォト蔵』にアルバムとしてアップしてあります。
よろしくお願いいたします。

Thanks a lot.


お願い:

*フォト蔵の画像保存機能の不具合により、ブログに用いた画像の一部が非表示になってしまうことが度々あります。

 非表示になってしまった全ての画像をフォト蔵で再保存してブログに再表示させても、また、他の画像や同じ画像が非表示になってしまいます(T_T)

 非表示になっている画像がありましたらコメント欄などで教えていただけると有難いです。

 よろしくお願いいたします。

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